「白みりん」が誕生したまち、流山

流山白みりんの魅力

切り絵行灯がライトアップされる流山本町

白みりんの2大ブランド
「万上」「天晴」

 
流山は“白みりん発祥の地”と呼ばれています。みりんの歴史は戦国時代にさかのぼり、かつては甘い酒として飲用されていたと考えられていますが、流山で本格的にみりんが造られるようになったのは江戸時代のこと。酒造業を営んでいた二代堀切紋次郎と五代秋元三左衛門が、従来の色が濃く濁りもある褐色のみりんではなく、色が淡く澄んだ「白みりん」を造ったことから、白みりんの2大ブランド「万上(まんじょう)」と「天晴(あっぱれ)」が誕生しました。

「万上」を開発・販売したのは二代堀切紋次郎だといわれます。堀切家の祖先は源頼朝からも信頼された武将の千葉介常胤だといわれ、堀切村(東京都葛飾区)の地名に由来しています。江戸時代中期に初代堀切紋次郎が流山に移り住んで、堀切家ゆかりの相模屋の屋号で酒造りをはじめました。
商標「万上」は二代堀切紋次郎が詠んだ短歌「関東の誉れはこれぞ一力(いちりき)で、上なき味淋醸すさがみや」からとったと伝えられ、「独力で造りあげた」「よろずの味の最上のもの」の意味が込められています。

「天晴」は五代秋元三左衛門が開発したといわれています。江戸時代前期に鶴ヶ曽根村(埼玉県八潮市)から移り住んだ初代秋元三左衛門。その子孫である四代秋元三左衛門が豆腐加工業の傍らに酒造りをはじめたのち、五代三左衛門が白みりんを手掛けました。
商標「天晴」がいつから使われたかは不明ですが、1898(明治31)年に皇族の小松宮彰仁親王が秋元家に立ち寄った際に、八代三左衛門のために「天晴」と揮毫。その文字がラベルなどに使用されています。

流山生まれの白みりん

酒造りからみりん醸造へ

 
そもそも流山でみりんが造られはじめた背景には、江戸時代中期の浅間山噴火が関係しているといわれています。江戸時代中期、浅間山噴火によって天候不順や冷害が悪化して天明の大飢饉が起こり、全国的に被害が拡大しました。米の大凶作によって酒の醸造量が制限され、その後の寛政の改革の一環として上方から江戸への「下り酒」の量が制限されるとともに、関東で下り酒に劣らぬ上酒を造らせる政策をとりました。この酒を「関東御免上酒」といいます。
流山でも関東御免上酒を造り、大消費地であった江戸に出荷していましたが、江戸時代後期になって米の豊作が続くと、幕府が今度は米価の下落を防ぐために「酒の勝手造り令」を出して新規の酒造りを奨励。制限されていた下り酒が大量に出回ったことから、流山の酒造業は衰退しました。このような社会情勢をきっかけに、堀切紋次郎と秋元三左衛門は酒造りからみりん醸造に移行していったと考えられています。

当時の江戸では二八蕎麦や天ぷら屋、鮨屋などの屋台や料理屋が軒を連ね、関東産のこいくちしょうゆとみりんを合わせる江戸前の味つけが一般にも広まっていきました。流山のみりんは、江戸のみならず京都や大坂でも評判になり、明治時代後期から大正時代頃にかけて「白みりん」として広く親しまれるようになりました。
 

白みりんとともに発展した流山で
受け継がれる味と歴史

 
白みりんで栄えた当時の名残は、現在の流山のまち並みにも感じられます。
残念ながら「天晴」の工場は流山にはありませんが、秋元本家跡に建つ一茶双樹記念館や近隣の光明院は、俳句愛好者や新選組ファンが訪れる人気のスポットになっています。
また、「万上」の味は流山キッコーマン株式会社に受け継がれ、現在も流山本町にあるみりん工場では、4種類の本みりんを醸造しています。工場の壁面の「流山本町まちなかミュージアム」では、流山のみりんに関する歴史資料を鑑賞でき、往来する人々を楽しませてくれます。
昭和初期、流山駅からみりん工場までは専用の貨物引込線(万上線)が敷かれ、アルコールの原料となるサツマイモなどを運んだり、みりんの出荷に利用されていました。現在は引込線跡の道路に案内板が立っており、道路のカーブにも当時の名残を感じることができます。

ちなみに全長5.7キロメートルの流鉄流山線は“都心から一番近いローカル線”とも呼ばれ、住宅街や川沿いを走るレトロな雰囲気で愛されています。始発・終点となる流山駅は「関東の駅百選」にも選ばれています。

レトロな雰囲気の流鉄流山線。写真は流山駅

文化財の建築物を活用したカフェも話題

 
水運やみりん醸造で栄えたまちの面影を残す流山。蔵造りの建物や老舗が軒を連ねる流山本町には、歴史ある貴重な建物を活かしたカフェやギャラリーなどが誕生して、新たな魅力となっています。

国登録有形文化財である笹屋土蔵を改装した「Café&Bal 蔵ごころ」では流山のみりんや新鮮食材を活かした料理を提供、同じく国登録有形文化財の寺田園旧店舗をリノベーションした「葉茶屋 寺田園」は木を感じる穏やかな雰囲気のなかで日本茶の新しい魅力を感じることができます。また、築100年以上の老舗呉服店の納屋を改装した「tronc」では本格的なフランス菓子を楽しめるなど、新しさのなかにも歴史が息づくスポットが続々誕生。まちの歴史に触れながら、落ち着いた雰囲気でまちあるきが楽しめるエリアとして注目を集めています。

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